今回は、泳げるようになるということとは少し離れますが、水への恐怖を減らすという意味では大変重要なボビングの練習について書いていきます。
ボビングの練習とは、かみ砕いていうと潜れるようになる練習です。
浮くことは泳ぐうえで大事なことですが、沈むことができるというのは溺れないようにするために大事なことです。
初心者にとっては、浮くことよりも沈むことができるほうが重要であるかもしれないのです。
以前の記事はこちらを参考にしてください
⓪お家でできる水慣れ方法編
①プールに慣れよう編
②練習への準備編
③蹴伸び練習編
④バタ足練習編
⑤ボビング練習編
⑥息なしクロールの練習編
⑦息継ぎありクロール練習編
ボビングが重要な練習である理由
理由は簡単です。恐怖感を減らすためです。
前回の記事でも説明した通り、水に対する恐怖感を減らすことが水が苦手な子が泳げるようになるために近道です。
では、沈む練習がなぜ恐怖感を減らすことにつながるのか。
人間は普段、重力がかかっている中で生活しており、足が地面から離れて過ごすことはほとんどありません。
一方、水の中では浮力がかかるため通常よりもかかる力はへり、水深が深いと足が届かなくなります。この、なにも支えがない状態でいるというのがかなり恐怖感を呼び起こすようです。
沈む練習をしていないと、沈んだ後にどう行動すれば呼吸ができるのかが分からないのでパニックになり、意図せず沈んでいきます。そうすると、水中で息を吸ってしまったりすることになり、鼻や肺に水が入って苦しい思いをすることになります。
そうすると、また水に顔をつけることに対する恐怖感がよみがえってきて、顔をつける練習からすることになってしまいます。
実際に、顔をつけられるようになるまでにそれ程時間がかからなかった子であっても、沈むことに対してはかなり抵抗があったようで、時間をかけて練習していきました。
このように、浮く練習よりも先に沈む練習をしたほうが良いと考えています。
沈む練習とは
沈む練習の最終目標は、
背丈よりも深いプールで、5メートル~10メートルを補助なしでボビングができるようになること
です。
これができれば、たいていのアクシデントは自分の力で解決し、溺れることがなくなると考えられます。
具体的な練習ステップとしては、
①腰くらいの深さのプールで両手を床につけられる
②腰くらいの深さのプールでおなかを床につけられる
③腰くらいの深さのプールで沈んでから静止できる
④背丈と同じか、それ以上の深さのプールで壁につかまりながらしゃがめる
⑤背丈と同じか、それ以上の深さのプールで手をつかみながらしゃがめる
⑥背丈と同じか、それ以上の深さのプールで壁をつかみながらボビングができる
⑦背丈と同じか、それ以上の深さのプールで手をつないだままボビングができる
⑧背丈と同じか、それ以上の深さのプールで一人でボビングができる
の8つです。それぞれのステップに壁が存在するので、説明していきたいと思います。
①腰くらいのプールで両手を床につけられる
文字にすると簡単そうですが、水に慣れていない人がやろうとすると意外と難しいです。完全に体を沈めないとならないからです。
体を完全に水の中に入れようとすると、浮力で浮いてきてしまい、足が床から離れるので、その時に恐怖と折り合いをつけないといけません。体を少し支えてあげたりして始めは補助しながら、だんだん補助をなくしていくのが良いと思います。
見本を見せながらやるのも一つの手です。経験上ですが、一度できると恐怖よりもできなかったことができた嬉しさが上回るので、初めの一回までにどれだけ失敗なく導けるかが重要です。
②腰くらいの深さのプールでおなかを床につけられる
これは習得するのはかなり難しいです。体をすべて水の中に沈めなければならないのはもちろんのこと、深くまで沈んでいくためには息を吐いて、体内の空気の量を減らす必要があります。
水の中で落ち着いて行動できるのかという練習にもなります。息を吐いているため、いつもより比較的苦しい中で頑張らなければならないからです。
③腰くらいの深さのプールで沈んでから静止できる
②ができるようになったらすぐにできるようになるとは思いますが、遊びとしては楽しんでくれた子が多かったので、入れておきました。ここまでできるようになったらかなり水に慣れてきたと考えてもよいくらいです。
④背丈と同じかそれ以上の深さのプールで壁につかまりながらしゃがむことができる
③までできたからと言ってもう水は完全になれた、と考えるのは早計です。今までは、足が届くプールの中で支えがない状態を再現していましたが、ここからはなにも支えがない状態です。
目を離すと事故になる可能性が大いにあるフェーズです。子供たちもそれを直感的に理解しているのか、これまでの練習が全く何も関係ないような怖がり方をする子もいます。
なので、まずは絶対的安心感のある壁を支えとして床まで足をつける練習をします。この時も、いきなり深く潜らせるのではなく、徐々に行わせることが重要です。
⑤背丈と同じか、それ以上の深さのプールで手をつかみながらしゃがめる
壁よりも少し不安定な手をつかんでもらってやらせてみましょう。中には壁よりも手のほうが怖くないと感じている子もいるようなので、④と⑤はどちらが先でも、構わないと思います。
手をつかんで行うことの利点は、同じタイミングで潜れることです。水中で目を合わせながら潜ることは多少、怖さが和らぐようなので始めのほうは一緒に潜ってあげるとスムーズに潜れるかもしれません。
⑥背丈と同じか、それ以上の深さのプールで壁をつかみながら連続でジャンプができる
⑦背丈と同じか、それ以上の深さのプールで手をつかみながら連続でジャンプができる
⑥と⑦は④、⑤の応用バージョンだと思ってもらえれば間違いないと思います。
なので、⑥と⑦は同じ節でまとめて書いていきます。
ボビングは、水中で床に足をついてジャンプし、それを連続で行うことを指します。1回ずつならジャンプできる子でも、連続でジャンプするのは難しい子が多いです。
難しい要因としては、1回ごとに息が吸えるくらいまで高くジャンプしなければならず、そのためにはしっかりしゃがんで勢いをつけてジャンプしなければなりません。それに加えて、水面から顔が出ている短い時間の間に、呼吸をしなければならないのです。
一瞬のうちにやることが多いので処理しきれずに、混乱してしまうようで、水を飲みこんでしまったりします。なので、始めは壁や手を使って、呼吸をする時間を長めにとってあげて、呼吸のタイミングや方法をおぼえてもらうことが大切です。
ここで、役に立つのが、一つ前の記事で書いた「ぶくぶくパっ」の練習です。人間の体はよくできていて、息を吐くと吸おうと思わなくてもある程度空気が入ってきます。「ぶくぶくパっ」をしっかりやらせることでボビングの上達が早くなります。
⑧背丈と同じか、それ以上の深さのプールで、一人でボビングができる
⑦まで繰り返し行って、しっかりできるようになったら最後は一人でやらせてみましょう。始めから何の助けもないと怖いと思うので、わきの下に手を添えて、力を入れずに安心感だけ与えてやらせてみるのが良いです。
この方法で何度かできるようになったら、次は手は添えず、進行方向に立ってあげて、先導する形でやらせてみます。視界に信頼できる人がいると、怖さはだいぶ薄れるようなので、かなり効果的です。一緒にやるのも一つの手だと思います。
最後は後ろから見てあげましょう。溺れたりしたらすぐに助けられるけど、子供の気持ちとしては、一人でやっているのと変わらない状況です。これができるようになれば、沈む練習については完璧です。
ここまでできると、ひとりで水遊びするのも嫌がらないようになり、教え手が少し遠くにいても、怖さではなく練習のほうに集中してくれるようになると思います。
ボビングの練習まとめ
今回は、泳げない子を教えるときに見落としがちな沈む練習を解説しました。沈むことができるというのは、練習するうえで意外と重要度が高いというのが分かっていただけたかと思います。
子供も顔を水につけられるようになるとすぐに泳ぐ練習をしたがるのですが、まずは沈む練習から行ってください。
地味な練習なので、すぐに飽きてしまうかもしれませんが「人間はもともと泳げない」から時間をかける必要がある、ので遊びを挟みつつ、水泳自体が嫌いにならないように指導してもらえればと思います。
参考になればうれしいです。
また読んでください!
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