速く泳ぐために必要な要素とは何でしょうか。
キックやプルをしないと進まないのだから、それをどれだけ強くすることができるかということに重点を置きすぎている人は多いです。いまだに。
陸上が地面をどれだけ効率よくけり続けることができるか、というのと同じようにはいきません。
なぜならば、水泳は水の中で行うからです。
水中では空気と比べ物にならない大きさの抵抗が生まれます。
そのため、水泳においては推進力を得ることと同じかそれ以上に、水の抵抗を減らすことが重要なのです。
水の抵抗 3種類
水の抵抗を減らす方法を考えるためには、まず「何が抵抗を生んでいるのか」を考える必要があります。
水中を進むときに人間が受ける抵抗は大きく分けて3種類あります。
粘性抵抗と造波抵抗とうず抵抗です。
粘性抵抗とは
水の粘り気が生む抵抗です。
水中ウォーキングをするときには、地上でウォーキングをする時よりも前に進みにくいと感じると思います。
これの正体が粘性抵抗です。
空気よりも水のほうが密度が大きいので、進むときに水を押しのけるのに大きなパワーが必要なのです。
競泳の試合用水着は撥水加工がなされていますが、これは粘性抵抗の影響を減らすための工夫なのです。
また、空気中のほうが抵抗が少ないことから水中にある体の体積が少ないほど(浮いているほど)抵抗が少なくなることが分かります。
造波抵抗とは
文字通り、波を作る時に生まれる抵抗です。
少し理解しにくいのですが、人間は動くときにエネルギーを使います。
泳ぐと波が生まれます。
波を作るのにもエネルギーが必要です。
人が泳いでできた波はどこから生まれたのかというと、人間です。
つまり、人間が前に進もうとするとき、エネルギーのすべてが前に進むために使われているのではなく、一部は波を作るのにもつかわれてしまっている、ということになります。
水面で泳いでいると多少なりとも波は生まれてしまうので、造波抵抗を受けていることになります。
水中で泳いでいるとき、いわゆるアンダーウォーターキックをしている状態の時には、造波抵抗の影響がほとんどなくなります。
つまり、水面で泳ぐよりも水中でドルフィンキックをしているほうが速いのです。
そのため、多くの選手がスタート直後やターン直後に泳ぎ始めるのではなく、ルールの15mぎりぎりまでアンダーウォーターキックをしているのです。
うず抵抗とは
体の前と後ろで圧力差がある時に生まれる抵抗です。
泳いでいる時の姿勢の違いで生まれる抵抗になります。
上半身は浮いているものの、下半身が沈んだまま泳いでいる状態と、体が水面と平行の状態で泳いでいる様子を表しています。
下半身が沈んだ状態においては、前からくる水の流れを足で止めてしまっているため、背中側には流れがない状態です。
そのため、頭の前に比べて背中の後ろ側の水が一時的に少なくなり圧力が下がっています。
同じ水中で圧力差があるのは不安定なので、差を埋めようと圧力の高いところから低いところへ水が流れようとします。
進行方向とは逆の力を受けていることになります。
その時に生まれるのがうず抵抗です。
(実際には3次元なのでもう少し複雑ですが、わかりやすく2次元で解説しています。)
一方で、体が水面と平行の状態で泳いでいる場合には、体の前と後ろで圧力差がほとんど生まれません。
よって、うず抵抗の影響はほとんどないことになります。
この図を見ればわかるように、うず抵抗を減らすには水面と平行になるように体を浮かせることが大切なのです。
水の抵抗を減らすには結局何をすればいいのか
3つの抵抗について解説しましたが、結局は何をすればよいのでしょうか。
造波抵抗については、ルール上15mまでしかアンダーウォーターキックをすることはできないので、とりあえず考えなくてよいでしょう。
粘性抵抗とうず抵抗を減らすことにまずは心を配るべきです。
これらを減らすには浮くことが一番大事になってきます。
伏し浮きができることです。
伏し浮きとは、ストリームラインを作って浮いたときに、後頭部・お尻・かかとが水面に出ている状態を指します。
これをマスターすることによって、かなり抵抗を減らすことができるようになります。
伏し浮きの練習方法については、いろいろな人がYouTubeでも公開しているので、探してみてください。
まとめ
速く泳げるようになるために必要なのは、推進力を得るよりも抵抗を減らすことである、という話をしました。
少し物理的な難しい話も出てきたかとは思いますが、なんとなくわかっていただけるだけでありがたいです。
とにかく、伏し浮き。
これを頑張ってみてください。
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