水泳や陸上など、己の身一つで限界に挑戦するようなスポーツをやっていると、必ず考えねばならなくなるのがこの問題である。
自分の種目の記録を伸ばしていくためには自分にはどのような能力が足りないのか
そのためにはどのようなトレーニングをすれば、効率よく求める能力が手に入るのか
これを考えながら練習を行っていくことで、同じメニューをこなしていても記録の伸びには大きな違いが出てくる。
なぜならば、どの程度追い込めばよいのかということが分かっているからだ。
今回は、運動強度と得られる能力の関係について述べていく。
運動強度の調べ方
まずは、運動強度について具体的に定義をしておく必要がある。
いろいろと方法があるが、最も現実的で最も使用されているのは、脈拍を調べる方法である。
詳しい解説は以下の記事にゆずる。
簡単に言うと、「運動強度と酸素摂取量には大きな相関関係がある。脈拍と酸素摂取量にも相関関係がある。つまり、運動強度と脈拍にもそう関係があるはずである」ということだ。
数字を使っているため、かなり難しく見えるかもしれないが、わかりやすく書いてあるので是非読んでみてほしい。
おさらいすると、安静時心拍数が60、最大心拍数が180である場合、今の心拍数が120だとすると、運動強度は次の式から、50%と求められる。
いちいち練習中に計算してられないので、大体どのくらいの心拍数でどのくらいの運動強度であるかは覚えておくべきである。
この人の場合は180で100%、168で90%、156で80%、144で70%、132で60%である。
運動強度と得られる能力
ご存じだとは思うが、運動には大きく分けて2種類存在する。
有酸素運動と、無酸素運動である。
もちろんではあるが、それぞれ得ることのできる能力が違う。
A1-有酸素運動
有酸素運動は70%以下の運動強度を指すことが多い。
このくらいの運動では、競技力向上に結び付くような直接的な能力を得ることは難しい。
これくらいの強度であれば、永遠に動き続けることができるくらいの強度である。
どちらかというと、練習を耐えるための練習に使われることが多い。
脈拍の上限が180の人であれば、130~150くらいで泳ぐことによって、長時間練習し続けることのできる体力がついてくる。
EN1-無酸素運動
基礎力を付けるためのすべての練習は70%を超える強度でやっておく必要がある。
また、無酸素運動の中でも運動強度によって得られる能力が変わってくる。
EN2-無酸素運動(80%程度)
いわゆるEN2に分類される。
乳酸がたまり始めるかどうかという境界線を押し上げるための練習である。
乳酸とは、筋肉が動いてエネルギーを消費する際に生まれる老廃物のようなもので、筋肉に蓄積されてくると、動きが鈍くなってくる。
つまり、疲労の原因物質である。
乳酸を生成されにくくするために行うのがこの強度での練習である。
具体的な練習メニューとしては、100m×8本とか100m×16本とかを短いサイクルで行う練習である。
1本ごとに5秒~10秒休憩できるが既定の本数行うのはぎりぎりであるくらいのサイクル設定がちょうどよい。
例えば、1分10秒~15秒で泳いで5秒~10秒休憩して、というのを心拍数160くらいで8本ぎりぎり続けることができるという人は1分20秒サイクル100m×8本というメニューが適切である。
体よりも先に気持ちが切れてしまう人がいるので、そこは気を付けたい。
EN3-無酸素運動(90%)
いわゆるEN3に分類される。
200m以上の距離を試合で泳ぐ人が良く行う練習である。
距離が延びれば伸びるほど重要な練習になってくる。
目的としては、心肺機能の強化がメインである。
具体的な練習メニューとしては、100m×8本で少し長めサイクルでレベルの高い位置でタイムをキープするような練習である。
100mで行うのであれば、30秒~40秒程度のレストがあるように組むのが望ましい。
レベルの高い位置というのはEN2の最も速いタイムから2~3秒速いくらいのレベル感である。
つまり、EN2を1分20秒サイクルをぎりぎり回れるくらいの人であれば、1分10秒を切るくらいで8本すべてをそろえて、1分40秒~50秒のサイクルで行うのがベストである。
かなりきつい練習で、個人的には一番嫌いな練習であった。
AN1-無酸素運動(100%)ー耐乳酸
カテゴリーで言うと、AN1と呼ばれる練習である。
EN2は乳酸を生成されにくくする練習であったが、AN1は乳酸への耐性を付けるための練習である。
50mや100mを現状の自分の最大限のタイムが出るように泳ぎ、心拍数をマックスまで高め、全身の筋肉がしっかり疲労するように泳ぐ。
2分ほどのレストをとって、再び自分のマックスで同じ距離を泳ぐ。
8本ほど繰り返す。
乳酸によって体が動かなくなってもどうにかして体を動かし、なるべく速くゴールにつく。
それだけを目標にした練習である。
最速のタイムが出せるように1本の中でペース配分も考えて泳ぐことが求められる。
水温によっては嘔吐する人も出る練習である。
AN2-無酸素運動(100%)ー乳酸限界
AN2と呼ばれる練習カテゴリー。
AN1と近いが、こちらの場合はたったの1本で体が動かなくなるくらいペース配分などは考えずに、ただしフォームは崩さずに、という練習である。
TT(タイムトライアル)やリレー形式で行うと、練習としては取り入れやすい。
まとめ
自分がどのような種目を泳ぐ人間で、現状どのような能力が足りていなくて、試合までの日数はこれくらいで。。。
ということを徹底的に考えたうえで、練習メニューを組むことが大切である。
上の運動強度と得られる能力はある意味机上論でしかない。
どれだけ一生懸命練習したところで、試合の前日に耐乳酸をやるバカはいない。
そういうことも加味したうえでメニューは作成するべきである。
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